ちょっと役立つワインの小話 第18回 アルゼンチンで頭角を現したフランス産品種のお話

日本ソムリエ協会 ワインエキスパート/ワイン検定講師 佐久間 裕輝(米国CPA)

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アルゼンチン産のワインを飲むことはありますか? 今やアンデス山脈を隔てたチリと並び南米地域の主要なワイン生産国であり,2012年では日本が輸出先の第7位となっており,レストランやワインショップでも代表的な新世界ワインとして見受けることが多いと思います。何よりチリワイン同様,比較的安く購入できるというイメージが強いかもしれません。

アルゼンチンにおける総生産の大半を占める地域がメンドーサ州であり,この州で生産される主要品種であり,かつアルゼンチンの代表品種が黒ブドウのマルベックです。このブドウで生産されるワインの特徴としては,まず色が非常に濃く,ほとんどインクの様な色合いです。そして凝縮感のある香りと熟した果実の味わいで,豊富なタンニンを感じられます。

さて,このアルゼンチンの代表品種であるマルベックは,元々フランスから渡った品種なのですが,当のフランスでは広く生産されていたにもかかわらず,その認知度が低く実際のところあまり評価されていない品種でした。いかに広く生産されていたかはその別名(シノニム)の多さにより理解することができます。有名な名称では「コット」や「オーセロワ」ですが,実は400...