書評 薄井 彰著『会計制度の経済分析』

(中央経済社刊/本体11,000円+税)

慶應義塾大学大学院 教授 太田 康広

( 43頁)

早稲田大学の薄井彰教授,渾身の力作である。2001年に完成した博士学位請求論文をもとに出版する予定が,どうしても納得のいかない点があり,その点を追求するうちに,完成まで約二十年の歳月を要したとのことである。総ページ数828ページとなっている。

第1章とそれに続く第Ⅰ部は,会計制度の歴史の解説である。複式簿記の起源を古代中近東に求める研究のサーベイから始まり,中世イタリアでどのように発展したかを述べ,現代の会計制度の説明にまで至る。会計研究の歴史についても,いわゆる真実利益アプローチに分類される大家の研究書から,ASOBATを経て,Ball and Brown(1968)以後の実証研究まで説明されている。また,日本の会計制度については,1872年の国立銀行条例から始まる戦前の会計制度を概説し,「企業会計原則」設定当時の歴史的資料を掘り起こし,以後の会計制度がどのように発展してきたかを詳述している。この部分は,以後の実証研究のパートから,かなりの程度,独立して読むことができる。

第Ⅱ部は,本書の中核をなす部分であり,資本市場研究と企業価値評価に充てられている。会計の情報内容についての研究では,...