ハーフタイム アメリカ流ビジネスの光と影

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スイスの歴史家ブルクハルトは,その著『世界史的考察』の各所で,19世紀の欧州でもアメリカ流ビジネスが盛んとなり,どん欲なまでの営利欲が席巻し始めたと嘆いた。ところが,当のアメリカでは,たとえばベンジャミン・フランクリンは『自伝』(1818)でこう述懐している。「節制,規律,節約,倹約,勤勉,正義といった13の徳目に関して犯した過失がなかったかどうか,毎日手帳に書き込むことによって反省した。若くして窮乏を免れ,財産を作り,様々な知識を得て有用な市民となったのは,勤勉と倹約のおかげである」。"正直は儲かる"や"時間はカネなり"といった生活原則は,功利的な傾向もあるが,M・ウェーバーは,17世紀にピューリタンによって米国にも移入された禁欲的プロテスタンティズムの倫理であったと,高く評価している。つまり,フランクリンのように享楽を斥けて貨幣を獲得する努力,簿記を活用する合理的営利活動,天職としての利益追求を正当化する職業倫理を「近代資本主義の精神」と呼んだのである。

ただ,M・ウェーバーが別の著書で書いているように「いかなる経済倫理も宗教のみによって決定されるものではない。経済地理的なまたは経済...