リース取引の会計実務,税務実務とIFRS導入の影響 第5回 リースバック,IFRS再公開草案の基本的な考え方の論点

監査法人トーマツ  井上雅彦

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本連載では,わが国の現行会計実務及び税務実務を振り返りながら,そのポイントや特徴を確認していく。また,「2013年5月公表のIFRSリース再公開草案(+その後の暫定決定)」で明らかになった方向性を踏まえ,日本の現行実務に及ぼす影響を検討する。

第5回は,リースバック,IFRS再公開草案の基本的な考え方を取り扱う。文中意見にわたる部分は個人の見解で,所属する法人の見解とは関係がないことを申し添える。

リースバック取引の基本的な考え方

リース・バックとは,ユーザー自身が調達した物件をリース会社に譲渡し,これを再びリース契約により賃借する取引である。ユーザーは,自己所有物件を売却することで売却代金としての資金調達が可能となる。売却価格が物件の帳簿価額を超えれば売却益相当の資金調達も可能となる。法人税法では,所有物件を担保にして融資を受ける,いわゆる「譲渡担保による借入」に類似したリース・バックの取引実態に鑑み,ユーザー自身が物件を調達すること,物件をリース・バックすることについての「合理的理由」を求めている。この「合理的理由」が認められない場合は,「売買」を取り消し,「金融」として処理する。

図表1...