書評 辻山栄子編著『IFRSの会計思考』‐過去・現在そして未来への展望

(中央経済社刊/本体4,500円+税)

パナソニック株式会社 経理・財務部 審議役 山田 浩史

( 60頁)

本書は国際財務報告基準(IFRS)の会計思考について,全体像を明らかにした後に,主要プロジェクトの基準開発について過去の検討経過に遡り,現在の状況と課題を示し,IFRSの未来の行方を展望するのに役立てようという意欲的な取組みである。IFRSを解説する本は多く出版されているが,IFRSの会計思考について深く考察し,主要プロジェクトの経過と課題を網羅的に検討している点で,本書は貴重な著作である。

国際会計基準審議会(IASB)は2001年に世界で採用される高品質で透明性の高い1組の会計基準を開発するために設立されてから15年が経過したが,IASBによる主要プロジェクトの基準開発は多くの困難に直面し,当初想定以上の時間がかかっている。本書では,このような状況になっている要因として「IFRSという基準の特殊性の問題」があることを指摘し,これに焦点をあてて,検討を加えている。

本書はこの分野の第一人者である辻山栄子教授(早稲田大学商学学術院)が編著者となり,「総論」(第1章「IFRSをめぐる理論的課題と展望」)を担当され,各分野に精通した教授及び若手の研究者が「各論」(第2章~第9章:概念フレームワ...