ハーフタイム 退職給付債務の割引率

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退職給付債務の割引率の高低ランキングが注目を集めている。国債金利がマイナスになる初めての決算期に。とくに,過去において国債金利よりも高い割引率を適用してきた企業については,投資家に"0.5%の下落は確定給付債務の現在価額を何億円増加させるか","株価に与える影響はいかほどか"と心配させるであろう。

日本基準とIFRSの退職給付に係る注記開示の違いも改めて注目されるところとなろう。IFRS適用企業は"0.5%の割引率下落は確定給付債務の現在価額を○○億円増加させます,0.5%の上昇は確定給付債務の現在価額を○○億円減少させます"と感応度を明記するから,投資家は影響額を試算する必要がない。それだけ不安が和らぎ,安心感を持ちやすい。

複雑な退職給付負債の会計処理の違い,とくに数理計算上の基礎率(割引率,昇給率)を見直すかどうか,また再測定した結果生じた差額の処理の違いも目立つところとなろう。日本基準の改訂その3(平成20年)は,割引率に係るIFRSとの相違点を穴埋めしたはずだったが"重要性判断"を選好し,目指したはずの"期末現在の利回重視"を先送りした。また,差額処理については,国際的会計基準(...