ハーフタイム タックスヘイブン対策税制からグローバル富裕税へ

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一昨年ブームとなったピケティ(2014)『21世紀の資本論』は,所得格差が拡大する原因を突き止めるとともに,グローバル富裕税の創設を提唱していた。「パナマ文書」の衝撃と波紋は,タックスヘイブン対策税制をめぐる議論を活発化させるだろうから,ここで改めて彼が提唱したグローバル富裕税の仕組みと実現可能性を見直しておこう。

その前に,わが国のタックスヘイブン対策税制をざっと見ておく必要がある。趣旨は,タックスヘイブンに所在する子会社(特定外国子会社等)の所得を「内国法人の収益の額」とみなし,親会社の益金として同列に課税すること。平成22年度税制改正による特定外国子会社等の定義は「日本資本(内国法人ではない)が直接・間接に50%以上入っている外国法人(関係会社)で,日本企業が直接・間接に10%以上株式等を保有する,法人所得税の存在しない国に所在する法人又はその租税負担割合が20%以下(25%以下ではなく)である法人」である。特徴は,①対象子会社はあくまでも数値基準による投資持分によって定義すること,②その課税対象は期間所得("フロー")である。

他方,ピケティが提唱するグローバル富裕税の対象は純資産...