書評 浜田 康著『粉飾決算‐問われる監査と内部統制』

(日本経済新聞出版社刊/本体2,400円+税)

青山学院大学大学院 教授 八田進二

( 33頁)

本書は,『「不正」を許さない監査」』(2002年),『会計不正-会社の「常識」監査人の「論理」』(2008年)に続く,第3弾として上梓された,著者からの会計不正の根絶に向けた渾身のメッセージである。それは,監査業務に専念してきた立場から,後に続く公認会計士に向けたエールでもあり,また,会計不正とは無縁の経営者になるための方策が盛られた最良の指南書でもある。

監査人に対しては,「長年,監査をしてきた経験からすると,監査人が粉飾を発見し,是正することは可能だと思います。」そして,「監査をする以上,不正は絶対に見つける,不正は絶対に是正する,という気概を持って仕事に取り組むのが,公認会計士の使命でもあるのです。」さらに,「すぐに監査の限界論を口にするような公認会計士は,監査を辞めればいいのです。」と宣告している。一方,経営者に対しては,「経営者,経営幹部も人の子である。」ため,人間としての弱さを秘めているのが通例であり,不正に走らないための「トップレベルでの内部統制」(第4章)を考えることが不可欠であると指摘する。

本書にいう「粉飾決算」とは,会計上の不正であり,「損失を隠蔽したり,先送りするこ...