企業会計基準委員会 小賀坂敦副委員長に聞く 収益認識基準の開発動向

これまでの経緯と今後の展開
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企業会計基準委員会 副委員長 小賀坂 敦

2018年から欧米では同一の基準による収益の認識と業績報告が始まる。IASBとFASBの取組みの成果として2014年にIASBより公表されたIFRS第15号は,我が国の企業や会計関係者に大きなインパクトを与える。5月31日に市場関係者からの意見募集を終えたASBJは,いよいよ我が国の収益認識基準の開発を本格的に始めることになる。大きな節目にあるといえるいま,ASBJの小賀坂敦・副委員長に基準開発のこれまでの経緯と今後の展開を聞いた。

本誌:収益認識は主要な会計基準ですが,これまで企業会計基準委員会(ASBJ)が開発をしてこなかったのはなぜですか。

小賀坂氏:これまで取組みを全く行ってこなかったわけではなく,経緯を説明したいと思います。

ASBJは,2001年7月に設立されましたが,その設立と同時に,財務会計基準機構内にテーマ協議会が設置されました。テーマ協議会(基準諮問会議の前身)は,ASBJで取扱うテーマをASBJに提言する組織で,2001年11月に最初の提言が行われました。その中で,重要性の高いテーマの1つとして収益認識が挙げられましたが,その当時は,商法改正への対応や減損会計の指針の開発など喫緊の課題が多かったために,中長期的なテーマとされました。

その後,2005年に国際会計基準審議会(IASB)とのコンバージェンス・プロジェクトが開始され,2007年に東京合意が公表されました。東京合意では,将来的にIASBが開発した基準が適用となる際に,日本において国際的なアプローチが受け入れられるように,緊密に作業を行うことが記載され,これに基づき,IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)が共同開発を行っていた収益認識プロジェクトに対し意見発信を行ってきました。その間,2009年と2011年にIASB及びFASBでの開発に合わせ,ASBJも論点整理を公表しています。昨年から開始した今回の取組みは,これらの流れの延長線上にあるものです。

本誌:本年2月にASBJより公表された「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(意見募集文書)では,ASBJが収益認識に関する包括的な会計基準の検討に着手したのは,2014年5月にIASBとFASBが収益認識基準を公表したことが契機となった旨が記載されていますが,もう少し詳しく着手し...