リース取引の会計実務,税務実務とIFRS導入の影響 第13回 IFRS 第16号の主要論点 下編その1

有限責任監査法人トーマツ  井上雅彦

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本連載では,わが国の現行会計実務及び税務実務を振り返りながら,そのポイントや特徴を確認し,また,IFRS 第16号「リース」で明らかになった方向性を踏まえ,日本の現行実務に及ぼす影響を検討してきた。

第13回は,IFRS 第16号「リース」の主要論点のうち「貸手の会計処理」,「原則的な処理の免除(免除規定)」(第3回下編その1)を取り扱う。文中意見にわたる部分は個人の意見で,所属する法人の見解とは関係がない。

貸手の会計処理

1.会計処理(貸手)の基本的な考え方

現行IAS17における貸手の会計モデルに大きな問題はなく,貸手の会計処理を変更するコストが便益を上回ることから,IFRS16は,現行IAS17における貸手の会計処理を実質的に引き継いでいる。貸手は,現行IAS17と同様に,リースをファイナンス・リースまたはオペレーティング・リースに分類し,各々異なる方法で会計処理する。

リースの分類は,契約の形式ではなく取引の実質に応じて決まり,具体的には次の考え方によって行う。

・ファイナンス・リースまたはオペレーティング・リースへの分類に際し,貸手は,リースが原資産の所有に伴うリスクと経済価値をどの程...