Q&Aコーナー 気になる論点(164) 特定譲渡制限付株式の会計処理(2)

‐完全親会社株式の交付‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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2016年度税制改正に基づき,完全親会社が,その子会社の役員・従業員等(以下「役員等」)に,当該完全親会社の特定譲渡制限付株式を交付した場合,当該完全親会社の個別財務諸表において,費用計上されるのでしょうか。

A:

2016年度税制改正において,完全親会社の特定譲渡制限付株式の交付は,子会社がその役員等から提供役務を受け,その対価として報酬債権を付与し,当該役員等が完全親会社に現物出資することを前提としているため,当該完全親会社の個別財務諸表では,費用計上されないと考えられます。

<解説>

完全親会社の特定譲渡制限付株式の交付

2015年6月から適用のコーポレートガバナンス・コードの影響もあり,自社株報酬の割合を高めようとする状況を踏まえ,2016年度税制改正(2016年4月1日施行)では,以下をすべて満たした株式を「特定譲渡制限付株式」とし(法人税法54条1項,法人税法施行令111条の2),その交付において一定の要件を満たした場合に役員報酬を損金算入することが規定されています。

① 一定期間の譲渡制限が設けられている株式であること

② 会社の無償取得事由として,勤務条件又は業績条件が達成されないこ...