ハーフタイム 会計にとって貨幣とは何か

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近代会計の歴史を顧みると,時代によって移り変わる経済・経営的課題に対処するために多数の会計基準が開発されてきた。その場合,誰でも会計学入門で学んだように「公準」と呼ばれる基本前提があった。「計算単位の公準」,「会計単位の公準」それと「貨幣的表示の公準」の3つである。その「貨幣的表示の公準」では,会計が多様な取引事象を統一的に報告できるように,ある貨幣単位を公分母として用いることが想定されてきた。もし貨幣価値が他の資産価値に対しては変動すると仮定すれば,貨幣単位による計算の同質性は保証されないからだ。しかしながら,最近は抽象的な「貨幣単位表示の公準」は議論のテーマとしない傾向がみられる。ある貨幣単位はそのままでは信頼できる公分母であるとは決して言えない状況が生まれ,具体的な会計基準をもって対応するようになっている。

第1の変化は1971年のニクソンショックから始まった通貨間の固定相場の崩壊と変動相場への移行である。その結果,IAS21号(オリジナル版は1983年)などによって,ある通貨の価値が他の通貨価値に対しては変動すれば,外貨換算基準によって換算調整する作業は期末のルーティンワークとな...