グループ会計の論点シリーズNo.5 パーチェス法から取得法へ(Ⅱ)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに:公正価値測定の深化と範囲の拡大

前回のシリーズNo.4(本誌 No.3265 )では,取得原価会計から公正価値会計への移行に注目してM&A会計手法の変化をレビューした。企業結合は連結会計の基礎であるから,今回は公正価値測定の対象の深化・拡大が企業結合会計および連結財務報告に与える影響を考察する。

被買収企業の最もポピュラーな資産である売掛金とその貸倒引当金については,また固定資産とその累積減価償却についても,資産評価勘定控除後の簿価をそのまま引き継ぐことなく,支配取得日の公正価値を再測定する( シリーズNo.4 ,図表2参照)。また売却目的長期性資産は公正価値マイナス売却費用の正味資産価値で評価する。これはパーチェス法でも始まっていたが,取得法ではこれを一層徹底し,適用範囲を拡大した。すなわち資産負債を個別に価値測定して満足するのではなく,被買収企業全体の公正価値測定を目指すことになった。まずは現行米国基準やIFRSが採用するエンティティ説からスタートしよう。

1.連結グループ概念の変化

公正価値測定の深化・拡大の背景にあるのは,図表1が示すように,100%未満を買収した場合であっても,親会...