シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第11回 金融商品と公正価値

慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生

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木村太一君 今回は,話題を変えるということでしたね?

教授 伝統的な固定資産から比較的新しい分野である金融商品に話題を変えましょう。

木村君 議論の中心は時価会計になりますか?

教授 そうですね。まずは言葉を統一しておきましょうか。ここでは時価会計を公正価値会計と呼んでおくことにします。時価は一般用語,公正価値(Fair Value:FV)は会計基準上定義された会計用語ということになります。以前(第2回「公正価値測定 vs. 取得原価測定」 No.3228 参照)も公正価値という用語を既に使っています。時価と公正価値は必ずしも同じではない,という議論は展開できるかもしれませんが,ここでの本論ではないのでやめておきましょう。なお,会計処理の説明ではFVという表記も用います。また,公正価値会計というときには,取得時のみならず,事後評価においても公正価値で測定し,従って評価(測定)差額が発生する会計を指すことにします。

木村君 その場合,測定差額がP/Lに行く(FVPL)か,OCIに行く(FVOCI)かが論点だと思います。

教授そうですね。金融資産・負債の全てをFVPLとする会計は全面公正価値会計と呼ばれますが,現...