ハーフタイム 英国をEUから離脱させた大衆の心理

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EU Film Days2016でドイツ映画「ロストックの長い夜」(2014年,ブルハン・クルバニ監督)を鑑賞した。舞台は1990年のドイツ統一から間もない旧東独最大の港街ロストック。ベルリンの壁崩壊によって自由になったが,仕事がなく社会との連帯感もないスキンヘッドの若者たちが主役だ。彼らが標的にしたのは仕事熱心で職場でも評判の良いベトナム人だった。戦後ドイツの経済成長に貢献したのは西側ではトルコ人,東側ではベトナム人だった。ドイツ統一によって旧東独企業が競争力を失い経営破たんが相次ぐと,そのベトナム人を,"ドイツ人のドイツを"と叫ぶネオ・ナチの若者が襲撃対象とした。家族と住む収容施設に火炎瓶で焼き討ちをかける場面がハイライトである。いままで親しくしていた職場や近所のドイツ人からも冷たくあしらわれ,"国へ帰れ"と言われて困惑するベトナム人の表情には,EU離脱決定後のマンチェスターで若者にいじめられるポーランド人移民のイメージと重なるものがあった。事件の背景はやや異なるが,外国人移民へのいじめは共通している。

英国の投票後判明したところでは,移民増加数が多いロンドンやエディンバラのような大...