ハーフタイム 正統か異端か

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「日本の会計観とIFRS開発・教育」を統一テーマとした2016年の国際会計研究学会第33回研究大会(8月27~28日,関西学院大学)では,ASBJが開発してきた国内基準とIFRSの相違を巡って論争が繰り広げられた。中心となったのは,"わが国では,いずれが正統で,いずれが異端か"だ。ASBJからみれば,モノ作りを本業とするわが国では収益費用アプローチや期間純利益を重視する取得原価会計が「正統」であり,IFRSの包括利益や全面公正価値会計は「異端」である。逆の立場をとるIASBからみれば,収益費用対応の原則は異端であり,資産負債アプローチこそ正統である。なお,正統・異端という言葉は学会の席で実際に使われたわけではないが,ASBJもIASBも自分たちが開発する基準を"高品質"(投資意思決定上の有用性が高いという意味を込めて)とみなすところから,ここでは便宜上,支配的な体制・傾向を正統,これに反対する立場を異端と呼ばせていただく。

ただ,何が正統で,何が異端である,と決めつけることは難しい。ASBJは,市場が求める会計基準がグローバル化する潮流を無視できず,IFRSとのコンバージェンスに苦心して...