グループ会計の論点シリーズNo.8 のれんと無形資産(Ⅱ)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

当シリーズNo.7( 本誌No.3277 )では,M&A取引から生まれるのれんの会計に移り,SFAS141やIFRS3の公開草案で議論された6つの構成要素(コンポーネント)の分析に着手した。本稿はのれんの要素分析から始まるが,それを通じてもっとも厄介な資産であるのれんの本質を明らかにする。のれんの本質が分かればのれんの会計処理も自ずと明らかになると考える。

さて,のれんの本質については,いろいろ意見が対立し錯綜している。①企業価値と純資産の公正価値との単純な差額とみる意見。②企業本体から分離できない(広義の)無形資産とみる意見(次のシリーズNo.9ではもう少し詳細に検討する予定である)。③シナジー効果によって生まれる超過収益力とみる意見。これらの意見は間違いではないが,いずれも一面的である。いまIFRS導入をめぐる議論において重大な論点の一つになっているのは,周知のとおり④のれんは規則的に償却すべき減価資産だという意見と,⑤減価するとしてもそのパターンを予測することは難しい資産だという意見の対立,いわば規則的償却説と非償却・減損テスト説の対立である。このように対立する意見も間違いでは...