グループ会計の論点シリーズNo.10 グループ会計の論点シリーズの総括

-IFRSと日本基準の比較検討-

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

このグループ会計シリーズでは,主にUS・GAAPを中心としてM&A会計をみてきた。最終回となる今回は,IFRS3と日本基準(企業会計基準21号)による企業結合会計を比較検討する。SFAS141RとIFRS3にはそう大きな差異はないが,日本基準はそうではない。形式上US・GAAPとIFRSに大いに収斂してきたが,永年の慣習によるモノの考え方はそう簡単に変わるものではなく,実態的には依然として違いが顕著に残っている。以下では重要と思われる違いをまず表示する。次いで,違いの背景や実務に与える影響などを考える。

1.企業結合の定義と会計処理

企業結合取引の会計処理法の違い(取得法vs.パーチェス法+持分継続法)と取得する資産負債の評価(公正価値vs.時価または簿価)の違いは,他のすべての違いの源泉である。

IFRS3結合企業が1つまたは複数の被結合企業の支配(control)を獲得する取引。"真正合併"とか"対等合併"とかいわれる取引も支配獲得である(付録A)。各企業結合取引に取得法(acquisition method)を適用する(4)。取得法の中核は,支配取得日における取得資産負債の公正...