ハーフタイム 監査法人と企業の関係

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わが国における不正会計の責任を追及する矛先は2016年春以降,企業経営者から監査法人のほうにシフトしている。外部の会計監査人については,不正の手口が巧妙であったという理由から「職業的懐疑心の欠如」について言及するに留まっていたが,論点はいまや"監査法人と企業の関係はどうあるべきか"に絞られてきた。いうまでもなく不正会計に直接責任を負うのは企業経営者だが,会計監査人の責任は避けて通れないテーマである。具体的には,①巨大化した監査法人組織の問題,②監査法人vs.企業の関係(監査以外のサービスのあり方を含む),③担当監査人vs. CFOの"なれ合い"関係,④監査人の独立性欠如などが指摘されている。公認会計士・監査委員会は担当監査法人への行政処分を勧告し,金融庁は課徴金支払いと業務停止を命じたほか,"なれ合い"対策としては監査法人の定期的な交代制が議論されている。こうした動きは上記で整理した問題点①~④のほぼすべてをカバーしているが,表面的形式論が多く,具体的実践論が不足している。ここでいう具体的実践論とは,既存の内部統制力をフル活用する方法だ。元経理マンと監査役であった筆者からみると"上から...