M&A物語 第7回 デューデリジェンスの着眼点と発見事項への対処

-Basic Level-

有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 パートナー 栗栖孝彰
有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 シニアマネジャー 伏木 貞彦

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この物語は,企業の成長戦略としてM&Aを実行するにあたって必要となる知識や会計処理,実務上の対応等について,とある会社員(野口直大朗)の経験ストーリーを通じて解説するものである。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

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ここ数日で,ミワ機械に対する各種のデューデリジェンスもほぼ終了した。今日はミノリ精機のマネジメントに対する財務・税務デューデリジェンス(DD)の報告会が終わったところである。

野口は,報告会の後に早速,一心常務から財務・税務DDで発見された事項に対する対応を取りまとめるよう指示を受けた。DD担当の会計士とは,DD実施前に実施手続を相談しており,またDD期間中も適時に調査進捗の報告を受けていたため,発見事項はほぼ想定どおりの内容であった。とはいうものの,発見事項への対応方法については不安があるため,まずは経理部の天音悠里子に相談することにした。

野口 「天音さん,忙しいところすまないのだけれど,さっきの財務・税務DDの発見事項について,今後,対処方法を考えないといけないので相談にのってくれないかな」

天音「もちろんOKよ。経理部で対応しなくてはならないこと...