ハーフタイム 反グローバリズムで国内の諸制度はどう変わるか

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米国企業のビジネスモデルによって代表されるグローバリゼーションは,新しい通信技術の発達と相俟って,ヒト・モノ・カネは国境を越えて自由に移動できる新しい世界経済システムを構築した。それを経済思想面から支えたのは1970年代からシカゴ学派を中心に広まった新自由主義であり,1990年の冷戦終了後には,国家の諸制度を弱体化し市場メカニズムに委ねる方向に働いた。

ところが,金融グローバリゼーションの端的なマイナス影響は,1997年のアジア通貨危機と2008年のサブプライム危機となって表れた。モノ・サービスの移動に係る規制緩和を最大限活かし株主利益を最大化する多国籍企業は,国内の職場をより低賃金の外国に移すことによって雇用を奪い,その結果反グローバリズムが予想以上に高まってきた。その典型的な表れが英国のEU離脱決定と米国のトランプ現象である。中間層の年収は殆ど増えず,移民や難民の流入問題に悩まされているからだ。多国間の税制の違いとタックス・ヘイブンを巧みに使い分ける多国籍企業は,本国の税収を奪うだけでなく,進出国でも租税回避を計っていると非難されている。「フラット化する世界」(2007年)を手放しで...