いまさらきけない会計基準等と実務のポイント 第8回 欠損てん補の手続

新日本有限責任監査法人 公認会計士 角野 晃広

( 20頁)

1.はじめに

昨今,経営再建中の企業が財務体質改善のため資本金を財源に欠損てん補を検討したことが話題となりました。

そこで今回は,「欠損てん補の手続」を取り上げます。貸借対照表における株主資本の計数の変動による欠損てん補につき,その手続や趣旨について解説します。

(本稿の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをお断りしておきます。)

「いまさらきけない」ポイント
・資本金・準備金・剰余金とは?
・欠損てん補に係る手続とは?

2.株主資本

株主資本には,資本金,資本剰余金及び利益剰余金が構成要素として含まれます(会社計算規則 76条 2項)。

「資本金」とは,株式会社の設立又は株式の発行に際して株主となる者が会社に対して払込み又は給付をした財産の額をいいます( 会社法445条 1項)。資本金の額は会社に存在する財産や常に確保されている財産の額を意味する値ではありませんが,登記事項として一般に公示され,会社規模や信用を示す指標として用いられています。

資本剰余金は資本準備金及びその他資本剰余金に区分され,利益剰余金は利益準備金及びその他利益剰余金に区分されます(会社計算規則76条4項・5項)。このうち,資本準備金及...