役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<197> 取締役解任の正当な理由(2)

 弁護士 小林 公明

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6 各判例とその分析(2)

前回(本誌 No.3291 参照)に続き,質問に対する回答として,正当理由の存否に関する最近の判例を概観し,それぞれ関係する事項を述べる。

各番号の○×は,正当理由の存(○)否(×)を意味し,その存在を認めた判例の各類型の番号とその内容のキーワードは,それぞれ①法令定款違反,②心身の故障,③職務不適任や能力欠如,④経営判断の失敗,⑤業務執行の障害である。

〔4〕○ 東京高判昭和58年4月28日LLI/DB判例秘書L03820214,判時1081号130頁(③⑤類型)

(1)判示

「そこで正当の事由の存否について検討する。(中略)監査役は善良なる管理者の注意を用いて事務を処理する義務を負い(商法280条,254条3項,民法644条)(会社330・民644に対応‐筆者注),取締役の職務の執行を会計のみならず業務全般にわたって監査する権限(同法274条・275条)(会社381Ⅰ・384に対応‐筆者注)を行使するについても,これに必要な識見を有することが期待されるところであるから,監査役たる控訴人(原告かつ解任された監査役‐筆者注)自身が前記のような明らかな税務処理上の過誤を犯し...