ハーフタイム ビジネスモデルに対応する会計はどれか

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ビジネスモデルという言葉は2009年公表のIFRS9号(金融商品)で初めて使われた。負債性金融商品(公社債等)を,もっぱら定期的金利支払いと元本償還を受けるために保有する企業は「償却原価法」を適用できるが,頻繁に売買を繰り返すトレーディング目的で保有する企業は「公正価値」を測定し,価値変動差額は発生時の損益とするよう求める。

通常,安定したキャッシュフローの受取を期待する非金融企業は前者を,市場価値変動を利用してキャピタルゲインを稼ぐ金融業者は後者を,それぞれ選ぶと考えられる。ただ,付録Aの用語の定義集をみてもビジネスモデルとは何かという説明はないが,ここでは単純に「資産の保有目的・取引目的」と仮定し,対応する会計は何かを考えてみたい。

第1に,金融商品を扱う金融業には時価・公正価値会計がふさわしい。金融資産負債の価値変動と未実現損益を含めて丸ごと業績として直接捉える包括利益計算が適しているからだ。他方,モノを扱う非金融業にあっては,歴史的原価会計のほうが適している。実現した収益とそれに対応する発生費用の差額を当期利益とすれば良いからだ。公正価値測定は難しいから,できるだけ実務がやさしい歴...