Q&Aコーナー 気になる論点(181) 人的資源のオンバランス化

-資産・負債への両建計上-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

( 22頁)

Q 国際的な会計基準が,原則としてすべてのリースについて,借手は使用権資産とリース負債を計上することとしてから1年が経ちました。「モノ」の賃貸を使用権の取得とし,すべてオンバランス化するとすれば,同じ経営資源である「ヒト」も同様に考えられると思われますが,そのような見込みはないのでしょうか。

A:

人的資源のオンバランス化に関する議論は,50年前からされていますが,現状,基準設定主体において,雇用された「ヒト」を資産・負債に両建(グロス)計上する点を取り上げる見込みはないと考えられます。

<解説>

物的資源のオンバランス化

これまで,米国では,1976年に公表された財務会計基準書(SFAS)第13号「リース会計」により,また,国際会計基準(IFRS)では,1982年に公表されたIAS第17号「リース」により,ファイナンス・リース(FL)は,売買取引として,借手は資産・負債を計上することとされてきました。

これに対し,オペレーティング・リース(OL)については,賃貸借取引として,借手は資産・負債を計上していませんでした。しかし,このような会計処理は財務諸表利用者のニーズを満たしていないといった批判に対...