会計上の見積り 実務上の留意点Q&A 第2回 時価なし株式の実質価額の算定と回復可能性

新日本有限責任監査法人 公認会計士 清宮悠太

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1. はじめに

「会計上の見積り」実務上の留意点Q&Aシリーズの第2回目は,「時価なし株式の実質価額の算定と回復可能性」がテーマです。

実務上,事業環境の変化等により子会社・関連会社の業績が悪化することに伴って,子会社・関連会社株式の評価が問題となり,評価損の計上が必要と判断される場合には決算に大きな影響を与えることも少なくありません。特に非上場の子会社・関連会社株式など時価を把握することが極めて困難と認められる株式の評価にあたっては,回復可能性の判定を行う場合など評価損計上の検討過程で将来予測等の見積りの要素が含まれることがあり,慎重な検討が必要となります。そこで,時価を把握することが極めて困難と認められる株式の評価にあたって,留意点・ポイントについて解説したいと思います。

なお,文中の意見に係る部分は筆者の私見であることを予め申し添えさせて頂きます。

2. 見積り項目の概要

Q当社は非上場の子会社であるA社の株式を保有していますが,当該子会社が直近の決算で赤字になった結果,期末時点では株式の実質価額が取得原価に比べて著しく低下しました。A社株式の期末時点の評価にあたって,どのような見積り要素...