2017年度インド予算案

‐インド経済概況と税制改正概要‐

KPMGインド アソシエイト・ディレクター 公認会計士,米国公認会計士 宮下 準二

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1.はじめに

2017年2月1日,インドのジャイトリー財務大臣は2017年度国家予算案を国会に提出しました。これまで予算案は2月末に公表され,4月まで続く国会で承認,予算の実行はそれ以降となっていました。これを,今回,予算案を1ヶ月早く公表する事により,3月までに承認,年度当初からの予算実行が可能となることが最大のメリットの1つとしています。また,これまでは,通常予算と,それより1ヶ月早く公表されてきた鉄道予算を,統合して公表する事により,重要施策の1つとしてあげているインフラ支出に関して,陸運,水運,空運とが連携し,複合的,相乗的な予算組みが可能になると期待されています。

2014年5月に誕生したモディ政権にとっては4度目(通年としては3度目)となる予算案ですが,ネガティブなサプライズがなく,インドの現状を理解したうえで適切な処方箋が施された予算であると一般的に評価されています。

2016年11月8日の夜,突如として公表された高額紙幣の廃止(詳しくは本誌No.3288号参照)は,市中経済を大混乱に陥れ,企業経営もさることながら,特に銀行口座やクレジットカードを持たない,あるいは,銀行が近く...