書評 秋葉賢一 著『エッセンシャルIFRS(第5版)』

(中央経済社刊/本体3,400円+税)

IFRS財団アジア・オセアニアオフィス ディレクター 竹村光広

( 37頁)

本書は,第I部「総論:IFRSの考え方」と第II部「各論:IFRSの解説」の2部で構成されており,第I部で,国際会計基準審議会(IASB)が公表した「財務報告に関する概念フレームワーク」の基本的な考え方が解説されている。日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」と比較しながら,IFRS基準と日本基準の間の概念的な違いだけではなく,そのような違いが生じる理論的な背景やその妥当性に関する著者の個人的見解も各所に散りばめられており,読み応えのある解説本となっている。

著者は2001年のASBJ発足時からASBJにおいて専門研究員を務められ,2007年から2009年まではASBJの主席研究員であった。このことから,2006年12月にASBJが発行した「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」は,著者の座右の銘であったと思われる。しかし,本書は,決して日本基準を専ら賛美するようには書かれておらず,IASBの概念フレームワークとASBJの概念フレームワークの違いを公正かつ客観的に分析している。例えば,IFRS基準は貸借対照表重視で全面公正価値測定を志向し...