会計上の見積り 実務上の留意点Q&A 第3回 工事契約

新日本有限責任監査法人 公認会計士 浅井哲史
新日本有限責任監査法人 公認会計士 小野瀬貴久

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1. はじめに

工事契約に係る施工主の工事収益及び工事原価の認識にあたっては,工事進行基準の適用を検討する必要があります。工事の進行途上においても,その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し,認められない場合には工事完成基準を適用することになります。成果の確実性の判定は,工事収益総額,工事原価総額及び決算日における工事進捗度という3つの要素について,見積りの信頼性があるかどうかにより行われます。しかし,実務上は設計の変更,採用する技術の変更,環境条件の変化等により工事途中で見積りの前提が変わることが多く,また各要素の見積りに主観が入りやすいことから,客観的・合理的な見積りが必要となります。

なお,文中の意見に係る部分は筆者の私見であることを予め申し添えさせて頂きます。

2. 工事進行基準適用上の見積りに関する留意事項

Q工事進行基準の適用の検討に際し,対象となる工事契約に係る工事対価についてはおおむね合意ができていますが,工事対価の一部が将来の不確実な事象に関連付けて定められており,決算日現在で対価が未確定となっているプロジェクトがあります。また,実行予算の策定で...