シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第17回 税効果会計

慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生

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木村太一君 そろそろB/Sの右側に移る頃合いですか?

教授 もう1回待ってもらって,資産も負債も発生する税効果会計を話題にしましょうか。

木村君 日本では多くの企業で繰延税金資産(DTA)が残りますね。

教授 会計基準の違いからではなく,税の特徴からですね。2005年当時,EUのCESR(欧州証券規制当局委員会,現在,ESMAに改組)が第三国会計基準とIFRSとの同等性評価のために,日本基準の技術的評価をしました。彼らの作業のステップとして,代表団が来日してASBJに日本基準とIFRSの違いについて意見交換する機会を持ちました。その時に彼らが最初に注目した領域が税効果でした。

木村君 日本企業のB/Sで,殆どの企業が規模に比して大きなDTA残があるから,彼らは日本の税効果会計基準はどこか違うと思ったのですね。

教授 話し合ううちに彼らも理解しました。減価償却のような損金経理要件が課されるものは,申告加算(将来の減算)はあっても申告減算(将来の加算)がないのですから,DTAばかり残りますね。例外は大きな圧縮記帳のある装置産業といわれています。

税効果会計の趣旨と繰延法

教授ではそもそも税効果会計はなぜ導入されたか...