会計上の見積り 実務上の留意点Q&A 第5回 資産除去債務

新日本有限責任監査法人 公認会計士 加藤 圭介

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1. はじめに

資産除去債務は,有形固定資産の除去に関する将来の負担を財務諸表に反映させることを目的とするものであるため将来の見積りの要素が強く,実務上,判断に迷うことが多い会計処理のひとつではないかと思います。今回は資産除去債務に関する会計処理のうち会計上の見積りに関する部分に焦点を当て,実務上の留意点・ポイントについて解説したいと思います。なお,文中の意見に係る部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添えさせていただきます。

2. 見積りの概要

Q 資産除去債務の計上にあたりどのような見積りを行う必要がありますか。

A まずは有形固定資産に資産除去債務が発生しているかどうかを判断する必要があります。資産除去債務が発生している場合には,有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積った上で,その金額に対し割引率を用いて算定した割引後の金額(割引価値)が,資産除去債務の計上額となります。

<詳細解説>

資産除去債務は,「有形固定資産の取得,建設,開発又は通常の使用によって生じ,当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。」と定義...