ハーフタイム 経済予測はなぜ誤り易いか

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「現実なんて知りませんよ,私たちは経済学者ですから」というジョークがあるそうだが,これから先の景気や株価が上向くかどうか知りたいとき,誰でも頼りにするのは著名な経済学者の経済予測である。ただ,経済予測には次の三分類があり,そのいずれであるかを吟味しながら傾聴すれば良いと思う。いまXとYが観察可能な現象だとすると,

① Xと無関係に,Yが起こるであろう(→無条件の予測)。

② もしXが起これば,Yが起こるであろう(→強い条件付き予測)。

③ 他に障害が起こらないでXが起これば,Yが起こるであろう(→弱い条件付き予測)。

この三分類は英国の経済学者J・R・ヒックスによるものだが,経済学に合う予測は①でも②でもなく③のみだという。たしかに,①が可能なのはほぼ自然科学分野に限られる。科学技術分野の予測はできれば②であって欲しいところだが,原子力関係では未だに③と見たほうが安全だ。不確実で複雑な要因が多く絡む経済現象の予測は間違いなく③である。

2013年4月以来,黒田日銀総裁は「2年以内2%物価上昇」を目指して異次元金融緩和を続けてきた。政府も国民もそれは予測②だと信じてきたが,いまは誰も信じていないよ...