Special Interview 中村直人弁護士に聞く 株主総会の近時の傾向

( 10頁)
 弁護士 中村 直人

◆株主総会に関連する諸制度の改正動向を教えて下さい。

近年,新会社法の施行やコーポレートガバナンス・コードの策定に伴う取引所の上場規則改正など,上場会社を取り巻く環境に大きな変化がありましたので,新しい想定問答の追加など,株主総会の準備が大変であったかもしれません。しかし,この1年は,株主総会に関連した法制度やルールの変更などは特にありませんでしたので,今年は少し落ち着くのではないかと思います。

株主総会の電子化等に関する会社法改正議論については,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第1回会議が本年4月に開催されたばかりです。また,7月総会の開催は,実務ではまだ様子見といったところです。ただ,6月中に会場の手配ができず,7月総会に移行する会社はあるかもしれません。

◆昨年の株主総会の傾向を教えて下さい。

昨年は,コーポレートガバナンス・コードを踏まえ,招集通知にいろいろと任意に記載する会社が増えましたが,今年もさらに増えるのではないかと思います。また,毎年同じことを記載しても意味がありませんので,記載内容も株主が関心のありそうな内容に変えてくるのではないかと思います。

議案の関係では,昨年,取締役の業績連動型報酬制度に関する議案が多くありました。おそらく今年も多くの会社で議案とされるのではないかと思います。

昨年の株主総会における質問を多い順に見ていきますと,経営政策・営業政策,配当政策・株主還元,財務状況,株価動向,リストラ・人事・労務と続きます。その他には,子会社・関連会社などの質問もありますが,その傾向は近年ほとんど変わっていません。一般の株主が関心をもつ事項ですので,それほど大きく変わらないということです。

◆想定問答準備の留意点を教えて下さい。

近年の傾向として,監査役や監査等委員,社外役員に対する質問が増えています。監査役や監査等委員,社外役員の役割や株主の期待が大きくなっていることが理由であろうと思います。監査役や監査等委員,社外役員の方に質問がなされた場合の対応については,各社準備なさっているかと思いますが,監査役や監査等委員,社外役員の役割や株主の期待を考えますと,監査役や監査等委員,社外役員が質問者から指名された場合に,全く回答しないということは難しいと思います。監査役や監査等委員,社外役員が回答することとしている会社も一般的になってきてい...