シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第19回 退職給付債務

慶應義塾大学商学部 客員教授 西川郁生

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木村太一君  今回のテーマは何でしょうか?

教授  退職給付債務を取り上げましょう。会計ビッグバンにおいて日本の退職給付会計基準が経済社会に与えた影響は多大なものがありました。多くの日本企業が確定給付年金を維持することに危機感を募らせ,確定拠出年金への移行などに向いました。経営行動へのインパクトという意味では,金融商品会計基準以上だったかもしれません。

木村君  会計ビッグバンの歴史的意味の広がりは大きいですね。

教授  取上げませんが,退職給付信託や厚生年金基金の代行部分の議論などは懐かしいですね。

退職給付会計の枠組みとその変遷

教授  日本では資金を外部に拠出しない退職一時金制度が古くからあり,そこに年金制度が加わり,大企業ではそちらも拡大しました。ビッグバン前の会計では,一時金は期末要支給額の一定割合(100%など)を引当計上,年金は財政計算に基づく当期の制度資産への拠出額を費用処理していましたね。

木村君  ビッグバンによって一時金も年金も数理計算を用いた処理になったのですね。

教授 年金制度には大きく確定拠出(掛金建)制度と確定給付(給付建)制度があって,今回は確定給付に話を絞りましょう。確定拠出制...