シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第21回 ストックオプション会計

慶應義塾大学商学部 客員教授 西川郁生

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木村太一君  今回はストックオプション(SO)会計ですね。

教授  新株予約権の付与のうち,従業員等に対し条件付でSOを付与する場合の会計処理ですね。米国での長い年月に亘る議論など,P/L費用処理化に向けた基準整備に時間がかかった領域です。

木村君  現行のような基準が制定されるまでは,米国などでは,当初,費用処理なしで従業員等にインセンティブを付与できることが魅力になっていたと聞いています。

教授  日本では法制度が整い,会計基準が固まってから,利用が広まったといえますので,お国柄の違いを感じます。

ストックオプションの費用処理への反対意見

教授  まずはなぜ費用処理が当初,強く拒否されたかを思い起こしましょう。従業員に対するSO制度で最も単純なものはどのようなものですか。

木村君  従業員に,権利付与時から一定期間の勤務を条件にSOの権利を与えるものです。

教授  そうですね。将来に向けて一定期間の勤務があれば与えられる権利ですね。将来もらえるおまけの約束みたいなものですね。

木村君  労働の対価性が当時の論点ですね。

教授 金銭による定期的な給与が基本的な労働の対価としてあります。そこにSOを付与するということは...