有限責任あずさ監査法人　公認会計士　太田　実佐

Ⅰ. はじめに

国際会計基準審議会（IASB）は，2009年以来，現行の金融商品に関する基準書であるIAS第39号「金融商品：認識及び測定」を段階的に置き換え，IFRS第９号の複数のバージョン（2009年，10年，13年各版）を公表した上で，2014年７月にIFRS第９号「金融商品」（完成版）を公表しました。

IFRS第９号 ^① の発効日は，2018年１月１日とされており，３月決算の企業であれば，2019年３月期から強制適用となります。

本稿においては，IFRS第９号の強制適用を目前にして，IFRS第９号の中でも一般事業会社に影響が大きいと思われる論点を中心に，３回にわたって解説します。

第１回目は，IFRS第９号の変更点の概要等について解説します。

なお，文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ. 発効日

IFRS第９号は，前述のとおり，複数のバージョンを公表する形で，段階的に完成されました。各バージョンの内容は図表１のとおりであり，各分野の規定が追加されています。

【図表１】IFRS第９号の各バージョンの内容

IAS第39号又は早期のバージョンのIFRS第９号は，IFR...