Q&Aコーナー 気になる論点(192) IASBの保険契約(2)

‐会計上の見積りの変更の取扱い‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

( 34頁)

国際会計基準審議会(IASB)が,2017年5月18日に公表したIFRS第17号「保険契約」において,保険契約の測定において生じた会計上の見積りの変更は,どのように会計処理するのでしょうか。

A:

IFRS第17号では,IAS第8号「会計方針,会計上の見積りの変更及び誤謬」と同様に,会計上の見積りの変更は過去に遡って処理しません。また,将来のサービスに関わる将来キャッシュフロー(CF)の変更は,原則として,総額を変えず保険契約負債の中で調整します。

<解説>

IFRS第17号の概要(1)‐フロー情報とストック情報

IFRS第17号において,保険収益は,保険サービスと交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価を反映する金額で,保険サービスの提供を描写するとしています(83項)。このため,IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」と整合的に,IFRS第17号では,保険サービスを提供したときに保険収益を認識することとしています(41項(a),B123項)①。また,当期に発生した保険金やその他の費用が,保険サービス費用となります(42項(a))。したがって,保険料の受取額と保険金の支払額との差額が,サ...