監査報告書の「透明化」に向けて 第3回  財務諸表利用者の観点から

野村證券株式会社 グローバル・リサーチ本部エクイティ・リサーチ部 エグゼクティブ・ディレクター 野村 嘉浩

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2017年6月26日付で,金融庁より,「『監査報告書の透明化』について」と題するペーパー(以下「金融庁ペーパー」)が公表されてから,「監査報告書の透明化」に関する議論が活性化しつつある。

本稿では,本誌 No.3319 (7月24日号)の「『監査報告書の透明化』について」を皮切りに, No.3320 (7月31日号)から始まった「監査報告書の『透明化』に向けて」シリーズの第3回として,2017年7月末日時点の情報をベースに,財務諸表利用者の観点から考察してみたい。

なお,本稿における意見に関わる部分は,筆者の個人的な見解であって,筆者の所属団体等の見解ではない点を申し添えておく。

1.「監査上の主要な事項」の導入

今回の議論の直接的な契機は,国際監査・保証基準審議会(The International Auditing and Assurance Standards Board:以下IAASB)による国際監査基準(International Standards on Auditing:以下ISA)の新設・改正である。一連の対応は2015年に行われ,監査報告書の拡充が2016年12月期から適用されること...