私の会計史 theme3 英国のEU加盟とインフレーション会計

  藤田敬司

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ロンドンへ赴任

1973年1月,ブラッセルから内地に戻ることなく直接ロンドンへ赴任した。欧州監督の管理下にあったロンドン支店,欧州大陸内現地法人,アフリカ内の各事務所の間で,本店を経由しない直接人事交流が始まり,筆者もたまたまその対象となったのである。

ロンドン支店のある金融街"シティ"には中央銀行をはじめ大銀行,株式取引所や商品取引所などが集中し,そこで3年間に体験した会計トピックスは多岐にわたるため,ここで取り上げるべきテーマはなかなか絞り切れないが,今回はEU加盟当時の様子とオイルショック,通貨ポンド安に起因するインフレーション会計に向けた議論,次回は,会計から少々離れるが,1970年代の英国社会をレビューし,欧州勤務6年間を総括する。

英国のEU加盟

ロンドン支店に着任した1973年に英国はEUに加盟した。反対だったフランスのド・ゴール大統領は1970年に亡くなり,ようやく欧州の一員になれたが,祝賀ムードはなかった。半世紀後のいまBrexitが話題となっている。当時の模様を箇条書きで書き留めて置きたい。

1)身近なところでは,子供が通い始めた公立小学校でもフランス語を教えるようになった。...