書評 國領二郎/三谷慶一郎/一般社団法人 価値創造フォーラム21 著『トップ企業が明かす デジタル時代の経営戦略 ~「絶対的価値」を生み出すエグゼクティブCIOの挑戦』

(日経BP社刊/本体2,000円+税)

慶應義塾大学大学院 客員教授 西川 郁生

( 50頁)

財務経理マンが読者層の殆どを占める本誌にこそ,本書を紹介する価値があると考える。評者自身もAI時代についていけていない。ただ,AIが経営を変えていく,新たな需要を作り出していく,ということは強く感じる。その時に日本企業がどこまで生き残れるのか,今のままの大企業体質,官僚体質ではついていけない,と直感する。そこで,日頃,ITの恩恵を受け,経営を下支えする財務経理マンが,AI時代の中で何らかの貢献ができるよう,知見を新たにすることが重要と思える。

本書は2部構成であり,第1部は「エグゼクティブCIOの挑戦」と題する3人の識者の講演録である。第2部が「最先端企業に学ぶ攻めのIT戦略」と題して三井物産,東京海上ホールディングス,三井不動産,資生堂,三越伊勢丹ホールディングス,帝人,JFEスチール,ANAホールディングスのケースを取上げている。ここでは,第2部も興味深いが,特に印象深かった第1部を紹介したい。評者にはそれを的確に要約する能力はないが,心に留まった表現を列記しておく。

山下徹氏は,システム化が先行すると,仕事がその制約を受けてしまうので,システム化の出番は最後だという。スタンダードパッ...