「監査法人のガバナンス・コード」への対応を聴く インタビューを終えて

青山学院大学大学院 教授 町田祥弘

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本誌3323号 (2017年8月28日号)から本号までの4回にわたって,「『監査法人のガバナンス・コード』への対応を聴く」という連載を行ってきた。

本連載では,まず,四大監査法人,中堅監査法人,及び,以前より監査法人のガバナンス・コード(以下,コード)を採用しないと表明していた中小規模の監査法人の計6法人について,各監査法人において,コードやコードに規定されている透明性報告書を担当する品質管理の責任者の方と,概ね監査現場において実際に監査業務の実施に当たっている監査実施の責任者の方にお話を伺った。とくに,後者の方々については,コード及び最近の監査規制の動向が,監査の現場にいかなる影響を及ぼしているのかについて伺いたいと考えたからである。

また,監査人側だけではなく,本号に掲載の通り,被監査企業において,会計監査人の選任議案の決定権を有する監査役等の立場から,上場会社2社の監査役会議長及び監査委員長にお話を聴いた。コードや透明性報告書,さらには,東芝事件以後の担当監査人の現場での様子や,監査法人ローテーションの議論を見据えて何をもって監査人を選ぶのか等について,忌憚のないご意見を伺うためである。

それぞれのインタビュー内容については,紙幅の関係で,収録しきれなかった部分もあるが,私自身は,インタビューを通じて,非常に興味深いお話を伺うことができたものと考えている。

ご多忙な中,ご協力いただいた監査法人及び企業の皆様に改めて,心より感謝申し上げたい。

さて,本インタビューを通じて,気づいた点や印象的だった点を,順不同で列挙してみたい。

1)

各監査法人の監査の品質に対する取組みや,その背景となる監査の品質に関する認識には,事前に予想したよりもかなり多様なものがあった。

それらは優劣をつけられるものではないし,各監査法人の文化や組成の経緯等にも密接に関連しているものであることから,各監査法人の「個性」とも呼べるものなのかもしれない。そのことは,同様に,各監査法人において何を自らの法人の「強み」と考えているかにも色濃く反映されている。

2)

いずれの監査法人においても,コードの公表を自らの組織や運営を見直すための契機として,前向きにとらえていた。

もちろん,本誌における掲載が予定されているインタビューであることは割り引く必要があるが,コードの公表を受けて,改革に乗り出そうとしている各法人の共通の認...