IFRSをめぐる動向 第100回 IAS第8号「会計方針,会計上の見積りの変更及び誤謬」‐アジェンダ決定による会計方針の変更

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 井上 雅子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,2017年6月から,IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)およびIASBで議論されている,IAS第8号「会計方針,会計上の見積りの変更及び誤謬」における会計方針の任意の変更に関する問題について取り上げます。

IAS第8号では,企業に会計方針の変更が認められるケースとして,IFRSによって要求されている場合,または,より目的適合性の高い情報を提供する場合を挙げており,企業は,会計方針を変更する際には,実務上不可能である場合を除き,遡及適用を行い,比較情報を修正することが求められています。

IASBが新基準の開発や既存のIFRS(基準に基づく会計処理方法)を修正する場合には,適用によるコスト・ベネフィットを考慮して経過措置が検討され,結果として,企業に対して遡及適用に関する免除規定が設けられることが多くあります。一方で,企業が会計方針の任意の変更を行う場合には,このような実務への配慮はなされておらず,結果として,より望ましい会計方...