収益認識基準公開草案の検討 財務諸表作成者の問題意識と実務対応 File03 日本貿易会

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企業会計基準委員会(ASBJ)が7月20日に公表した企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等の内容について,財務諸表作成者に話を聞く本シリーズ。今回は,昨年の意見募集で「IFRS任意適用会社としては,IFRS15号を踏襲した基準が望ましい」としていた日本貿易会にインタビューを実施。同会経理委員会会計コミッティ幹事会社である双日・主計部の横森健至氏,福富昌太氏,丸山瞳氏の3名にお話を伺った。

1.公開草案について

――ASBJが昨年実施した意見募集では,日本貿易会は意見書を提出しました。それを踏まえ,今回の草案についての全体的な評価をお聞かせください。

横森氏: 日本貿易会は貿易会社を中心に組織された業界団体です。当会計コミッティに所属する企業(商社)は海外を含めたグループ企業管理を行う上でIFRSを適用することはメリットが大きいと考えています。したがって,収益認識基準を開発する際も,IFRS15号をベースにして欲しい,と要望していました。

今回の草案はその点,全般的な評価としては歓迎するというスタンスです。

――草案は,実務家にとって理解しやすいものでしょうか。

横森氏: 当会に所属している企業は,全体としてはIFRSに慣れているため,形式面では,それほど違和感はありません。ただし,単体や国内の子会社にも適用することとなるため,そちらには丁寧に説明していく必要があると考えています。

内容面でも,概ね満足しています。昨年の意見募集の際,「原則としてはIFRS15号の内容で構わないが,個別財務諸表への適用を考えると,詳細なガイドラインや具体的な指針を追加して欲しい」ということを要望として挙げました。今回,設例などにおいて,ある程度盛り込まれたと考えています。

――ガイドラインの充実,という観点からはどう評価されますか。

福富氏: IFRS15号ベースと,我が国特有の取引に関するガイドラインが用意されているので,必要十分なものは用意されていると思います。

ただ,現在示されている設例は,概念的なイメージで書かれており,個々の取引に当てはめようとしたときに,やや足りないものがあるという印象です。

横森氏:一方で,基本的に,IFRS15号も今回の基準も,包括的な収益基準であって,従来の会計慣行の明確化であると捉えています。したがって,会計処理が大きく変わるという認識はしていない,と...