収益認識基準公開草案の検討 財務諸表作成者の問題意識と実務対応 File04 モバイル・コンテンツ・フォーラム

  

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企業会計基準委員会(ASBJ)が7月20日に公表した企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等の内容について財務諸表の作成者側として検討を重ねてきたモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)。主な会員は,スマートフォン向けのゲームアプリなどのモバイル・コンテンツの開発や販売を手掛ける企業である。編集部はこのほど,MCFの会計・税務部会で部会長を務め,財務諸表作成者からの意見をとりまとめる立場である加藤孝之氏に話をきいた。

1.公開草案について

――今回の収益認識に関する会計基準の公開草案をどうご覧になっていますか。全体的な評価をお聞かせください。

加藤氏: 国際財務報告基準(IFRS)と日本基準をほぼ同一の内容にするという取組みや,今回の収益認識基準がIFRS15号に沿ったかたちでできあがったというプロセスや内容自体については理解しますが,事業の実態を正確に表すという会計基準の目的から考えるといくつかの課題があると考えております。

 特に,現状のIFRS適用時の解釈について課題があると感じており,それがそのまま日本基準でも同様の課題になることを懸念しております。

――草案について,関係者の間では規定の文章自体が日本語に馴染まない表現であり読みづらい,理解しづらいのではないかとの心配もあるようです。企業の実務家にとって理解しやすいものになっていると思いますか。

加藤氏: 新しい会計基準ということもあり用語や内容が理解しにくい部分もあると感じます。設例がありますが,これをもっと増やしてもよかったかもしれません。この基準に限ったことではありませんが,会計基準自体がそもそも実務家にとって読みやすいものになっているかというとそうではないように思いますので,もっとわかりやすく実務家寄りの工夫があればと感じています。

2.履行義務の充足による収益認識に課題

――昨年5月末までの意見募集の段階から公開草案の公表に至るまでの間,モバイル・コンテンツ関連の業界団体として考えを主張した個別の論点と,公開草案の内容についてお聞かせください。

加藤氏:MCFは昨年の意見募集に対しても意見書を提出しており,そのときは主にスマートフォンゲームの収益認識についての問題点を提起しました(https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/CL20-16.pdf)。し...