いまさらきけない会計基準等と実務のポイント 第16回 企業結合・事業分離等に関する会計基準

~分離元企業と分離先企業の会計処理~

新日本有限責任監査法人 公認会計士 安福 健也

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1.はじめに

近年,事業環境の変化のなか,企業再建の一手段として,また,事業再編の一環として,事業譲渡が行われるケースが増加しています。

事業譲渡に関する会計処理は,事業を譲渡(移転)する企業(以後,「分離元企業」といいます。)及び事業を受け入れる企業(新設される企業を含む)(以後,「分離先企業」といいます。)の双方に発生します。

分離先企業に関する会計処理は「企業結合に関する会計基準」に規定され,平成18年4月1日以降実施される企業結合から適用されており,また,分離元企業に関する会計処理は「事業分離等に関する会計基準」に規定されており,平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用されています。

適用後,10年が経過するものの,各企業にとっては,必ずしも頻繁に行われる取引でもないと思われ,また,取引が実際に行われた場合の金額の影響も大きいと考えられます。

今回の「いまさらきけない」では,分離元企業を親会社P社,分離先企業を既存の子会社S社として,(1)譲渡事業の対価が子会社S社の金銭である場合,及び(2)譲渡事業の対価が,子会社S社の株式である場合について,簡単な数値を使って,それぞれのケース...