これでスッキリ!IFRS保険会計Q&A 第6回(最終回) 表示・開示および移行アプローチ

有限責任 あずさ監査法人  蓑輪 康喜
有限責任 あずさ監査法人  細野 賢二
有限責任 あずさ監査法人  榎本 洋介

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<はじめに>

約20年に及ぶ議論を経て,2017年5月に国際会計基準審議会(IASB)がIFRS第17号「保険契約」(以下,「IFRS第17号」または「本基準書」という)を公表した。本連載では,難解といわれるIFRS第17号を分かりやすく解説するため,IFRS第17号の適用にあたり検討が必要となる主な論点をQ&A形式で説明してきた。第6回(最終回)の本稿では,日本における現行の保険会社の財務諸表との相違点に触れながらIFRS第17号の表示・開示規定の概要を解説し,また,IFRS第17号への移行アプローチについて解説する。なお,文中の意見に渡る部分は私見である。

(注)特に断りのない限り,項番号および付録は本基準書のものを指す。

Q1.

IFRS第17号における財政状態計算書と日本基準における貸借対照表の表示に関する主な相違点は何ですか?

A1.

IFRS第17号では,図表1のとおり元受保険契約と再保険契約①は区別して表示する必要があり,再保険契約資産と元受保険契約に係る保険契約負債は相殺して表示することはできません(78項)。一方,日本の保険業法施行規則では,一定の要件を満たせば,再保険契約につい...