私の会計史 theme12 最後の経理部勤務(その1)

~連結経営の高まりと「単主連従」から「連主単従」への変化

  藤田敬司

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連結重視への転換

5年間のドイツ勤務を終えて,1992年に本店経理部に戻ると,決算管理室長に任命された。個別決算は若いときに6年間経験していたから,懐かしい気分で業務を引き継げた。ところが連結決算のほうは,ほとんど白紙の状態から学び直す必要があった。理由は3つある。

①当時の企業社会は,海外子会社を通じた経済活動が活発化し,市場の規制緩和と情報手段の急激な発達によって,企業の真の姿をグローバルに捉える必要に迫られていた。わが国でも昭和52年から連結財務諸表制度は導入され,すでに20年を経過していたが,連結決算情報は有価証券報告書の添付書類に過ぎず,「単主連従」の風潮は変わっていなかった。そこで個別財務諸表重視から,当時唯一つの世界基準であった米国基準をモデルとした連結会計基準への転換を計り「連主単従」への制度転換を急ぐべき時期だったのである。

②会社は昭和37年から,海外の資金市場で外貨を調達するために,当時唯一のグローバルスタンダードであった米国基準によって連結財務諸表を作成してきた。そのおかげで,連結貸借の相殺消去のような基礎的会計処理に習熟した経理マンは増えていた。しかし,その考え方の...