コーポレート・ガバナンスとリスクマネジメントについて

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士  小林昭夫

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1.はじめに

ここ数年のコーポレート・ガバナンス改革の取り組みは,我が国企業に一定の変化をもたらした。政策保有株式の解消,独立社外取締役の増員,監査等委員会設置会社の増加,指名・報酬委員会の設置,役員報酬制度の見直し,取締役会評価の実施と開示など,さまざまな変化が目に見える形で現れている。一方で,我が国企業の長期にわたる株価や収益性の低迷からの脱却というのが,一連のコーポレート・ガバナンス改革の当初からの眼目であった。この点に照らし,企業の果断な意思決定を支えるための「攻めのガバナンス」の観点から,実効性のあるガバナンス改革が本当に進んでいるのか,という疑念の声を聞くこともある。実際の企業の現場では,確かに横並び意識からコーポレートガバナンス・コードへの形式的な対応を行う側面が全くないとは言えないが,取締役会を中心として徐々に改革は進んでいると思われる。今後,企業のリスクテイクの姿勢に明らかな変化が出てくることを期待したい。

会社法の改正やスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの導入により,一連の制度が整備された現状においては,企業ガバナンスの「形式」よりも「実質」が問...