ハーフタイム 判断と仮定に依存する「推定」

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会計においては推定に依存する処理が多い。固定資産の減価償却における耐用年数や残存価値の予測などでも,IFRSでは推定を働かせるよう求められる。取得原価は現在価値を表す代替手段として用いられるものであり,会計は常に現在価値の報告を目指し,その評価には推定が必要となるからだ。いわんや金融資産などの公正価値会計では将来キャッシュフローやリスクの推定は日常的課題だ。これは会計測定のテクニックとして捉えられがちだが,もう少し大所高所から考えてみる必要がある。

企業業績に大きな影響を及ぼすときは,株主や社会に対して直接責任を負う経営者の判断は不可欠であるが,日常的課題についても経営者判断を求めないわけにはいかない。不正会計を教訓にすれば,経営者の権威を拠り所にするとか,経営者の意向を忖度する慣習は好ましくない。望ましいのは,自社のビジネスモデルにふさわしい合理的仮定や前提条件などを予め設定しておき,環境変化と実績に照らして毎期見直すこと。さらには自律的推定に挑戦することであろう。

市場参加者の視点に立って公正価値を測定するときは外部の専門家の意見を聴取することもある。しかしそこから得られた数値はあくま...