上場会社の経理担当者が知っておくべきPPA実務 第12回(最終回) PPAを実施しても無形資産が計上されないことがある

株式会社Stand by C 公認会計士・税理士 角野 崇雄

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1.はじめに

当連載では,PPAの基本的な考え方や概要について解説を行ってきた。連載の最終回として,PPAを実施しても無形資産が計上されないケースについて解説する。PPAにおいては,買収時点において存在する無形資産を評価することになるため,買収時点において赤字若しくは利益があまり出ていない会社を買収した場合,無形資産が認識されたとしても,評価した結果価値が出ず(マイナス値)に無形資産が計上されないことがある。

2.買収の主たる目的である資産が無形資産として計上されないケース

企業がM&Aを実行する目的は様々であるが,その多くは,被買収企業が持つブランド,顧客基盤,流通販売網,特許,技術などを獲得することを目的とする。PPAでは,その手続きを通じて,被買収企業が持つそれら無形資産を識別・評価することになるが,必ずしも企業が買収時に意図していた無形資産が計上されないケースがある。これは,PPAが,買収した「その時点」において存在する無形資産を評価するプロセスであることから生じるもので,一般的なPPAのイメージと,実際のPPA実務との間でギャップが生じやすいところである。

例えば,X00年3月31日...